皆さんこんばんは、ポッキーです。

今日は鳥取県からウイスキー事業に参入した、松井酒造合名会社について書きます。

松井酒造の製品を飲む記事に書こうかと思ったのですが、例によってあまりに長くなってしまったものですから、テイスティング記事は別に書くことにします(ノ∀`)

もう少し手短に文章を書く能力が( ゚д゚)ホスィ...

松井酒造は明治43年(1910年)創業の鳥取県倉吉市の企業で、芋・麦などの焼酎製造がメインの酒蔵だったようです。日本初の干し芋焼酎を製造した企業でもあるようですね。その他、柚子のリキュールや梅酒の製造なども行っています。

「焼酎製造がメインの酒蔵だった」と記載したのは、現在、同社のHPが改修され、焼酎その他製品に関する情報がなくなり、ウイスキーに関する情報のみが掲載されるようになっているためです。同社はその他、アメーバブログやFacebookなども活用されていますが、いずれも本年1~2月を最後に焼酎その他製品に関する掲載はほぼなくなっており、HP同様にウイスキーに関する情報に特化するようになっています。

以上から、同社は今後、ウイスキーを主たる製品として事業を行っていくという経営判断を行ったのであろうことが想像できます。



現在は世界的なウイスキーブームになっており、日本でもハイボールやマッサンの影響で、ひと頃ほどではないにせよウイスキーブームは継続中です。また、日本で製造されるジャパニーズウイスキーについても、サントリー、ニッカウヰスキー、キリンディスティラリー、マルスウイスキー(本坊酒造)などの貢献により、世界的なコンクールで多くの賞を受賞するようになっています。そのためジャパニーズウイスキーは、欧米や中国を始めとするアジア圏など、日本以外にも世界各国でも飲まれるようになっていると共に、多くの注目を集めるようになっています。

世界的なウイスキーブームを背景に、スコットランドではスコッチの、アメリカではバーボンの蒸留所の新設が相次ぐようになっていますが、日本でも例に漏れず、ウイスキーブームの影響に加えて2020年の東京五輪を見据え、全国各地に蒸留所の新設・新設準備が相次いでいます。

具体的には、北海道に堅展実業の厚岸蒸留所、福島県に笹の川酒造の安積蒸留所、静岡県にガイアフローディスティリングの静岡蒸留所、鹿児島県に本坊酒造の津貫蒸留所、茨城県に木内酒造の額田醸造(蒸留)所、岡山県でも宮下酒造がウイスキー製造を開始しています。また、これまで既にウイスキー製造を行ってきた若鶴酒造でも、蒸留所の設備更新によるウイスキー増産を検討しているようです。

いや~すごいラッシュですよね.。゚+.(・∀・)゚+.゚
久々のウイスキーブーム到来に加え、日本の景気も回復基調(最近は足踏み状態ではありますが)だったことも追い風だったのでしょうが、自分で書きながらけっこうな数ができるんだな、と改めて心が踊っているところです(´∀`*)

2020年のオリンピックイヤー前後には各蒸留所の製品が出揃ってくるのではないかと思います。ここに既存のメーカーの製品も加えて、次は地ビールならぬ地ウイスキーブームがやってきたら良いなぁと、そしてそれらを心ゆくまで飲んだくれたいなぁと切に願っている次第であります(*´Д`*)



さて、そんな中で他社とは違う動きを見せているのが、上述の松井酒造(名)です。蒸留所新設ラッシュの中で、各社はポットスチルを導入し、自社でウイスキー蒸留に乗り出しているわけですが、松井酒造は自社でのウイスキー蒸留は行っておらず、原酒を他社から購入し、自社でブレンド、割水、ボトリングして販売する、いわゆるボトラーズとしてウイスキー業界に参入してきたのです。

蒸留所が自社で蒸留して販売する製品のことをオフィシャルボトルといいます。対して、自社以外の蒸留所から樽ごと、またはタンク等に移し替えて購入・保管し、自社で瓶詰めして販売する業者のことをボトラーズといい、ボトラーズの販売する製品のことをボトラーズボトルといいます。

日本ではサントリースピリッツ、ニッカウヰスキー、キリンディスティラリーなどの大手ウイスキーメーカーは、いずれも自社で蒸留所を保有し、オフィシャルボトルとしてウイスキーを販売しています。一方で、小規模な地ウイスキーメーカーのウイスキーは、自社蒸留のところもありますが、スコットランドから購入した原酒をブレンド、割水して、ボトラーズボトルとして自社ブランドを冠して販売しているところが多くなっています。

当ブログでもいくつか記事にしていますが、札幌酒精笹の川酒造玉泉堂酒造宮崎本店などがボトラーズですね。ただし、笹の川酒造は安積蒸留所を新設していますので、今後はオフィシャルボトルも販売していくことになりますね(´∀`)

日本の地ウイスキーメーカーがボトラーズであることが多いのは、別に主たる事業として日本酒や焼酎の製造を行っており、ウイスキー事業が従たる事業であることや、そのためにウイスキーを本格的に製造するまでは人繰りが回らなかったり、ウイスキー用のポットスチルが大変高額であったりすることなどが理由に挙げられます。

焼酎も蒸留にはポットスチルを使用しますが、一般に焼酎のポットスチルはステンレス製、ウイスキー用のポットスチルは銅製で、それぞれ必要な設備が違うのです。若鶴酒造のようにステンレス製のポットスチルでウイスキーを蒸留してきた強者もいますが、極めて例外的です。

上述のウイスキー事業へ参入する事業者は、いずれも蒸留所の新設または改修・拡張等により、銅製のポットスチルを導入して自社蒸留し、オフィシャルボトルの販売を予定しています。また、既存のボトラーズの地ウイスキーメーカーは、戦後~昭和の洋酒ブームの中でウイスキー事業に参入していたところばかりですので、今回の松井酒造のボトラーズとしてのウイスキー事業参入は、少なくとも日本においては非常に久しぶりなのではないでしょうか。

ボトラーズは自社で原酒を製造するわけではありませんので、蒸留所としての特性や原酒の個性を打ち出すことはできず、また良い製品を販売するのためには、買い付けた様々な原酒をブレンドする優秀なブレンダーの力が必須になります。

一方で、蒸留所を建設する必要も、高額なポットスチルを導入する必要もなく、ある程度の熟成年数の原酒を購入してしまえば、新規に蒸留してから数年間の熟成の歳月を要する必要もなく直ちに製品の販売ができるというメリットもあります。原酒の確保さえできれば、設備投資を抑え、製品化までのリードタイムを大きく短縮できてしまうわけです。

松井酒造は現在は主にスコットランドから原酒を輸入して製品化しており、HP上では「スコットランドに貢献したい」「スコットランドには良い原酒がたくさんある」旨の発言をしておられますので、今後もスコッチウイスキーを輸入してブレンド、割水、ボトリングしての販売が主体となりそうです。

あえて個人的な妄想を言わせていただくと、地ウイスキーメーカーの新規参入ラッシュが続いているわけですから、既存の地ウイスキーメーカーも含めて様々な地ウイスキーメーカーから原酒を買い付けて自社で貯蔵、その後ブレンド、ボトリングして販売する、ジャパニーズウイスキーを取り扱うボトラーズが日本から誕生したら面白いのではないかと考えています。

更に妄想を重ねると、サントリーやニッカウヰスキー、キリンなど大手メーカーからも買い付けてブレンドして販売してくれたら尚更幸せな気持ちになれそうです(笑)が、まぁこれはさすがに現実的ではないんでしょうね…。



さてさて、そんなわけで松井酒造のボトラーズとしてのウイスキー事業参入は、個人的には非常に興味深く、また楽しみに見ているところなんですが、そんな同社と同社の製品が、ウイスキー造りの本質とは逸脱したところで注目を集めてしまっているようです。

IMG_4029
ところでこの2本を見てくれ。こいつをどう思う?

すごく…コメントしづらいです…

というわけで、この写真もそうですが、松井酒造の商品案内とS社のY崎の製品ラインナップを見ると、あぁ、うん…となってしまうわけです。

松井酒造のウイスキーは、本年4月頃から販売開始されたわけですが、当初からこのデザインは…とあまり良いとは言い難い意味での注目も多く集めてしまっていました。

更に、上述のとおり8月4日よりHPをリニューアルしているのですが、これが更に火に油を注いだような格好になってしまっています。HP上の「ウイスキーについて」というページにおいて、代表者と思しき人物の写真と共に、推敲が不十分と思われる文章が掲載されたことで、更に好ましくない意味での注目度が高まっています。

松井酒造(名)ウイスキーについて
書きぶりを見る限りはウイスキー事業へ参入した後の顧客対応でご苦労があったようですね。ただ、嘘は書いていないというレベルの、意図的にミスリードを狙ったのではないかと訝しんでしまう発売時の製品紹介や、ラベルのデザイン等を見てしまうと、一概にそこに同情的にはなれない面もあるのですが。

創業100年を超える老舗の酒蔵さんですし、地方の酒造会社の経営者というのは、往々にして地元や地方の名士、地名士さんであることが多いものです。クレームめいた問い合わせ等が仮にあったとすればですが、それへの対応には無論、慣れていなかったであろうことや、地方の中小企業者は製造も販売も広報も最少人員で皆が兼務しながら事業を回していますので、急に注目を浴びて対応にてんやわんやになったであろうことを思うと、同情的になるかは別にして責め立てる気分にもならないのは確かです。

今回の文章掲載にしても、恐らくは地名士である社長さんが書かれたものと思われ、周囲に諌められる方がおられなかったのかな、と思います。今後、地元の商工会議所とかメインバンク、同業者仲間など、誰か諌めてさしあげられる方が出てくれば良いのですが。

会社の規模に関わらず、企業の経営者というのは一国一城の主なわけです。グレーゾーンのラベルデザインにするのも、誤解を生じさせかねない製品紹介をするのもHP上にいかような文章を掲載するのも、主の経営判断なわけですから、本来は部外者がとやかく言うべきことではありません。

もしもおかしな経営判断をしているのであれば、いずれ顧客や取引先が離れていったり、法的措置をとられたり行政処分を受けたりと、社会的・法的にしっぺ返しを受けることになるだけですので、殊更、第三者が騒ぎ立てるのもどうかという思いはあります。わかっているつもりではあるのですが、今回のHP改修と文章掲載は、どうしても悪手である思わざるをえないわけです。

HPはオンライン上での企業の顔で、企業はそれを使ってまずは自社を知ってもらい、その上でできれば自社に良いイメージを持ってもらえるよう努めなければいけません。そうでなければHPを持つ意味はありません。自社にできるだけ良いイメージを持ってもらうために、嘘にならない範疇で脚色を加える、つまり自分を上げるのは、どの企業でも行っていることであり、大いにやれば良いと思います。

しかし、他者・他社を下げる言動、これは絶対に掲載してはまずいのです。これをやってしまうと、上述の自分上げが一気に鼻について胡散臭くなってしまい、せっかくの有用な広報ツールであるHPが、かえって逆効果を招くことにもなりかねないからです。

ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝氏の名前を出して、日本のウイスキー業界、ジャパニーズウイスキーを下げていると受け止められかねない内容であること、「迷惑」とまで言い切ってウイスキーファンを下げたこと、他の部分も推敲が足りていないと思われるところが大変多いのですが、とりわけこの二点に関しては、悪手であると言わざるを得ません。

今回のHP改修内容を見た上でボトルデザインや製品紹介を見てしまうと、ウイスキーブームの尻馬に乗って手っ取り早く儲けたいだけなのかと、ライトなウイスキーファンや海外の方に売ってしまえればそれで良く、グレーなだけで黒でなければ何でもありという企業姿勢なのかと疑ってしまうことにもなりかねないのです。

他者をどれだけ下げても、決して自分は上がらないのですから。



さてさてさて、かなりクサしてしまいましたが、松井酒造の「会社情報」を見ると、こちらも推敲不十分と思われる部分は多いものの、これを読む限りは、社長さんは現状維持で満足してふんぞり返っている地名士さんというよりは、ご自分なりにかなり勉強をされているであろうこと、決断力と行動力を持った方であろうこと、勢いのあるエネルギッシュな方であろうことが想像できます。

特に、職人気質な製造業者にありがちな、「良いものを作れば売れる」という考え方ではなく、「流通革命を起こしていきたい」、つまり「売ってなんぼ」という考え方が見えるあたり、製造業の経営者としては珍しい、販売(流通)についてきちんと考えておられる社長さんなのではなかろうかと思えるわけです。

ただ、「会社情報」を読んでも「ウイスキーについて」を読んでも、松井酒造はリテラシーの観点で幾分弱みを抱えているように見受けられ、また、社長さんがなまじ行動力がありそうなだけに、お一人で色々がんばられすぎているのかなというようにも見えるわけです。

近時、新規にウイスキー事業に参入しようとしている事業者は皆、上手にメディアに対してプレスリリースを行い、新聞記事やテレビ番組等で報道されています。一方で松井酒造は、HP、アメブロ、Facebookなど自社発信の情報は出てくるものの、マスメディアを活用した様子は窺えず、せっかくボトラーズという面白い業態でのウイスキー事業参入を果たしているのにもったいないですよね。

マスメディアも常に新しい情報、報道のネタに飢えていますし、鳥取県という地方ですから、ちゃんとプレスリリースを行えば地元メディアなんかは飛びついてきそうなものなんですが。上述の社長への勝手なイメージと合わせて考えると、ご自分でやらないと気がすまない、ご自分の言葉で語らないと気がすまない方なのかもしれませんね。

中小企業の浮沈というのはある意味ではすべて社長にかかっているといっても過言ではありません。その意味では、社長に決断力と行動力がありそうなことは本来大きな強みですし、

経営理念から具体的な行動計画までは一気通貫。すべての行動は経営理念に通じている。

これを理解しておられない経営者が世の中にごまんといます。有能でエネルギッシュな地方の中小企業の社長というイメージが湧くだけに、それ故に社長が一人で抱え込んで突っ走ってしまっているのではないかと懸念してしまいます。

上手にマスメディアや中小企業支援機関などを活用されると、経営者や従業員の負担軽減にも繋がるのではないかと思います。製品の本質とは本来関係のないところで不用意な誤解を生むことは百害あって一利なしなのではないでしょうか。



と、あれこれ余計なお世話を長い長い文章で綴ってしまいましたが、松井酒造のFacebookを覗いてみると、万単位での「いいね」が付く他、海外からのコメントも多く、既に地方から広く日本に、そして世界に注目されている、今後、大きく羽ばたく可能性を秘めた企業になっています。

これは、ボトラーズらしい素早い製品展開、S社の製品に似ている気はしますが海外の方にウケの良さそうなデザイン、英語にも対応したHPやFacebookの活用、焼酎からウイスキーへ勇気を持って大きく舵を切った経営者の決断力・行動力に起因するものであろうと考えます。

HP上の文章やデザイン、誤解を招きかねない製品紹介はコアなウイスキーファンには好まれないものでしょうが、もうそこは自社のターゲットとはみなさず、むしろ炎上商法として活用しているのかもしれません(;´∀`)

製品のセグメントを海外のジャパニーズウイスキーファンやインバウンド客と、国内のライトなウイスキーファンに絞り込んでいるのかもしれませんね。コアなウイスキーファンは結局、味が気になって放っておいても買ってくれそうでもありますしね(ノ∀`)

あれもこれもに経営資源を避けない中小企業にとって選択と集中は経営戦略として非常に重要ですし、100年続いてきた焼酎事業をさておいて、新たな事業分野に経営資源を一気に集中させるのは経営者として本当に勇気のいる決断をされたと思います。

少なくとも現在のところ、松井酒造のウイスキーは完売御礼が続いているようですし、同社の経営判断は奏功しているようです。ただ今後、東京五輪終了後には海外からの日本への注目度は確実に下がるでしょうし、日本のウイスキーブームもじわじわい落ち着いてきています。これも東京五輪後には拍車がかかることでしょう。

その後に生き残っていけるか、同社の製品が広く一般に定着するか、海外に受け入れられ続けるかは、今度はデザインや売り方ではなく、ボトルの中身、製品自体の力が重要になってきます。

インターネットで等で情報を探すにつけ、製品自体にあまり良い評判が聞こえてこないのが気にかかるところですが、ウイスキー事業への追い風が続く今のうちに、良い原酒の確保に向けた取り組み、ブレンド能力向上に向けた取り組みなどを継続され、流通、つまり売り方だけではなく、製造面、造り方でも力を発揮してほしいところです。

そんなわけで色々問題含みではありましょうが、面白さとエネルギーの感じられる企業でもあり、日本発のボトラーズ企業として、是非成功してほしいと嘘偽りなく思っています。

そしていつの日か、スコッチウイスキーばかりではなく、様々なジャパニーズウイスキーにも目を向けられ、それらを集めたブレンデッドモルトやブレンデッドウイスキーを製造・販売してほしいと、かなり上の方でも書きましたが本当に夢見ていますのでお願いします(笑)

ほんと、いつかどこかのメーカーがやってくれないかなぁ…。

それでは今回はこの辺で。

(=゚ω゚)ノナガクテゴメンナサイネ!!
|彡。゚+.*:.サッ



|ω・)チラ

とかこんなこと長々と書いてましたらHPが再度の改修に入っているようですね(笑)
あちらこちらで評判が悪かったのか、どなたかが諌められたのか、何にしろ良かったです(;´∀`)
今後の成功をお祈り申し上げます。

(=゚ω゚)ノコンドコソジャ、マタ!!
|彡。゚+.*:.サッ